中小企業が離職率を下げるために

みなさま、こんにちは!SNS担当タナカです👩
日本国内の人材不足が深刻化している中、中小企業においては人材を確保することが至難の業となっています。
人材が育つ前に離職してしまうケースも多く、離職率を下げることが早急の課題となっている企業も多いことでしょう。

離職率とは?

離職率とは、特定の企業の従業員数に対し、一定期間内にどれだけの人が退職したのかを示す割合をいいます。
一般的には1年を算出期間とするケースが多いですが、目的によっても変わります。
離職率はその企業の働きやすさを図る指標ともいえるものであり、企業は離職率を下げるよう工夫することが大切です。

 

企業規模別離職率の平均

雇用動向調査によると、令和2年度の企業規模別平均離職率は
「1,000人以上」の企業が14.0%
「300~999人」が13.3%
「100~299人」が17.4%
「30~99人」が14.7%
「5~29人」が13.6%
と「100~299人」規模の企業の離職率が高くなっています。

直近10年間のデータを見ても、「100~299人」規模の企業の離職率は常に他よりも高く、約15~21%の間で推移しています。
その他の企業の離職率は年度によって異なりますが、おおむね14~16%の間です。

出典:『令和2年雇用動向調査:性、企業規模別入職・離職率』(厚生労働省)

「中小企業の方が離職率が高い」とよく言われますが、中小企業基本法における中小企業の従業員数は「小売業」は50人以下、「卸売業」と「サービス業」は100人以下、「製造業その他」は300人以下です。
よって、最近のデータを見ると一概にそうとは言えません。
しかし、従業員が100~299人の中規模の企業では、他の規模よりも離職率が高いと言えます。

採用方法による離職率の違い

新卒採用の場合と、中途採用の場合でも離職率は異なります。
それぞれの離職率の平均と離職理由についてご紹介します。

新卒採用の離職率の平均

厚生労働省が発表した『新規学卒就職者の離職状況(平成30年3月卒業者)』によると、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で約4割(36.9%)、新規大卒就職者で約3割(31.2%)となりました。

3年以内の離職率は中卒の場合が7割、高卒の場合が5割、大卒の場合が3割になるという「七五三現象」が昔から知られていますが、
近年のデータではやや傾向が変わっており、中卒が55.0%、高卒が36.9%、大卒が31.2%です。

新卒の社員の離職理由

『平成30年若年者雇用実態調査』によると、若年労働者(15~34 歳の労働者)が初めて勤務した会社を辞めた主な理由は上から順に

「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が 30.3%
「人間関係がよくなかった」が 26.9%
「賃金の条件がよくなかった」が 23.4%
「仕事が自分に合わない」が 20.1%

出典:『平成30年若年者雇用実態調査:これまでの就業状況 』(厚生労働省)
であり、労働条件や人間関係、そもそもの業務内容のミスマッチが理由として挙げられています。

中途採用の離職率

エン・ジャパンが人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』を利用する企業693社に「直近3年間で入社した中途入社者の定着率」についてアンケートを行ったところ、以下のような回答が得られました。

【図1】貴社の中途入社者の定着率について、どのように捉えていらっしゃいますか?

【図2】貴社の中途入社者の定着率について、どのように捉えていらっしゃいますか?(業種別)

【図3】貴社の中途入社者の定着率について、どのように捉えていらっしゃいますか?(企業規模別)

もっとも多い回答は「定着率が低い」の「30%」で、全体の約6割が定着率「60%以上」でした。
このデータから逆算すると、中途採用の離職率は6割以上の企業で40%、業種別での平均が10%以下です。

中途の社員の離職理由

エン・ジャパンでは、年間約6万人の入社・定着支援を行う中で導き出した中途採用の早期離職要因を「GRC」という言葉で表しています。
「GRC」とは、

  • ギャップ(Gap):採用前に企業に対して抱いていた「期待」と、入社後の「現実」の乖離
  • リレーション(Relation):直属の上司との関係性
  • キャパシティ(Capacity):仕事の量のキャパシティ

のことで、ギャップがあったり、リレーションやキャパシティに課題があったりすると、早期離職につながりやすくなります。
具体的に原因を挙げていきたいと思います。

労働量や労働時間が多い

長時間残業や休日出勤が当たり前のようになっている企業も少なくありません。
このような職場は従業員一人ひとりへの業務負担が大きく、心身の健康に影響が出てしまうこともあります。
業務時間内に仕事が終わらないような職場は、離職者を出しやすい傾向にあるでしょう。

職場の人間関係に悩みがある

企業には様々な人が集まり、協力して業務を遂行していくことになります。
その分一緒に仕事をする上司や同僚などと相性が合わないと、ストレスがたまったりモチベーションが低下したりする原因になり得ます。
特に離職理由として注意しなければならないのが、職場内でのモラハラやパワハラです。
たとえ上司が部下のためにやっていることでも、不用意に怒ったり威圧したりすると部下にとってストレスになる可能性があります。
人との関わりは仕事をするうえで避けて通れないものだからこそ、コミュニケーションがうまくいっていないと、仕事を辞める大きな引き金となってしまいます。

労働条件に不満がある

給与や福利厚生などに不満がある場合、より良い待遇を求めて離職してしまうケースがあります。
特に中小企業は昇給の基準や賃金規定などがあいまいなケースも多く、このような場合は不満が生じやすいでしょう。
企業側に改善する意思や姿勢がみられない場合、社員が離れてしまうリスクがあります。

職種や事業部などやりたい業務の選択肢が少ない

中小企業では特定のジャンルに特化した製造・販売などを行っているケースが多くみられます。
その場合、どうしても社内で担当する仕事も限られ、ジョブローテーションがしにくいという側面があるでしょう。
業務の選択肢が狭いとモチベーションを維持することが難しくなり、「ほかの仕事も経験してみたい」という気持ちを生み出す原因につながります。
その結果、ほかの企業へと転職してしまうケースがあります。

企業の先行きに不安や疑問がある

中小企業の中には、家族経営や年功序列制度の影響が強く残っている中小企業もあるでしょう。
このような場合、企業の将来性に不安を抱く従業員もいます。
また、業績不振の状態であるにも関わらず対策を講じていない場合なども、従業員の不安を煽る原因につながります。
企業の将来があまりにも不透明な場合、自身のキャリアも描きにくく離職を考えるようになってしまいます。

中小企業における離職の対策方法

中小企業において離職を防ぐための企業側が行える具体的に5つの対策方法を紹介します。

労働環境の見直し

長時間労働や休日出勤の常態化は、離職者を招く大きな要因です。
このような場合は、速やかに労働環境の見直しを行いましょう。
従業員の労働時間を適性に把握するため、勤怠管理システムやタイムカードなどを有効活用することが大切です。

福利厚生を充実させる

福利厚生を充実させることによって、従業員のモチベーションの向上を見込めます。
限られた予算内で工夫し、従業員が満足できるような内容を考えましょう。
たとえば、食事補助や誕生日休暇、ピアボーナス制度を導入するなどの選択肢もあります。
これらのものは大きなコストをかけずとも無理なく取り入れやすくおすすめです。

コミュニケーションを活性化させる

コミュニケーションを活性化させて、職場内の人間関係をより円滑なものにしましょう。
従業員同士が気軽に会話できるスペースの設置、また文字でのやり取りが円滑になるチャットツールの導入も一案です。

成長機会を提供する

きちんと教育制度が整っていないと、「自分は成長できるのだろうか」という不安を従業員に与えてしまいます。
不安を解消するためにも、学習の機会を設けたりキャリアアップのための研修を実施したりするなどの工夫を行いましょう。
定期的に学習機会を設けることで、従業員も自身の成長を感じることができます。
そのスキルを企業で生かそうという気持ちが生まれ、人材の定着化を図れるでしょう。

柔軟な働き方を提案する

なかには家族の介護や育児などの理由から、退職せざるを得ない人もいるでしょう。
このような「働きたくても自由に働けない」という問題を企業側が解消することで、従業員の離職を防ぐことができます。
たとえば、オフィスに出社せずとも働けるテレワークを導入する、短時間勤務制度を取り入れるなどの方法があります。
従業員のワークライフバランスに配慮した働き方を提案することで、離職率を下げられるでしょう。

まとめ

今回は、中小企業における平均の離職率や主な離職理由、対策方法などについて紹介しました。

従業員が定着・活躍できる組織を作るために、自社の従業員の特徴や強みをしっかりと把握し、それぞれがやりがいを持って仕事を行えるよう、人員配置や教育、社内制度を通じた支援を行いましょう。

過去に『福利厚生』についてブログでも掲載していますので、あわせて参考にして頂ければと思います。

【働き方改革】見直すべき福利厚生とは