【SDGsウォッシュ】とは何か。

世はSDGs時代。近年、さまざまな場面でSDGsという言葉を耳にするようになりました。
取り組みを始める企業も増える中、本当にSDGsに取り組んでいるのか?SDGsウォッシュなのではないか?といった指摘も見られます。
SDGsウォッシュって何?!
今回はSDGsウォッシュの意味から、企業がSDGsウォッシュと呼ばれないための事業への取り入れ方やそのステップを詳しく見ていきたいと思います!

【SDGsウォッシュ】とは

SDGsウォッシュとは、実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるように見せかけることを指す言葉です。
このウォッシュとは1980年代に欧米を中心に使われていた、うわべだけ環境に配慮していると見せかけた企業を批判する「greenwash(グリーンウォッシュ)」という造語から来ています。

これは、環境に優しいといった意味を持つ「green(グリーン)」と、ごまかしの意味を持つwhitewash「(ホワイトウォッシュ)」を掛け合わせたものです。

SDGsへの関心が高まっている現在、実態が伴っていないのにSDGsへの貢献を発信する企業が出てきています。
また、取り組みが不十分であったり方法が間違ったりしているせいで、SDGsに貢献する意図はあるにもかかわらず、SDGsウォッシュだと批判されてしまう事例も生じています。

では、どのようなケースがSDGsウォッシュと呼ばれるのでしょうか。次では2つの具体例をもとに見ていきましょう。

取り組みを掲げているものの行動を起こしていない

まず1つ目は、自社のHPなどにはSDGsと事業を結び付けた取り組みを進めていると掲載しているものの、
実際には行動を起こしていないケースです。

この場合は、自社も取り組まなければならないという意識から、SDGsの本質を理解する前にとり急ぎ事業とSDGsを結びつけ、そこから進展していないことが考えられます。

掲げている取り組みと実際の事業の矛盾

2つ目の例としては、公表しているSDGs×自社の取り組みと実際の事業が矛盾している場合です。

具体的に考えるために、企業がSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」の解決に向けた取り組みをしていると仮定します。

この目標を達成するために企業は、

  • CO2削減のために社用車に電気自動車を導入
  • 事業所の電気をLEDに変更し、さらには太陽光などの再生可能エネルギーを利用

といった取り組みを掲げます。

しかし実際には、

  • 電気自動車を導入するも、社員のガソリン車利用率は変わっていない
  • 再生可能エネルギーへの切り替えは完了したが、化石燃料を取り扱う企業へ投資している

と、環境にプラスになるような行動を実際に起こしているものの、同時にマイナスになる取り組みも行なっており、矛盾が生じます。
これもSDGsウォッシュと見なされるのです。

本来、企業の価値を高めるために始めたSDGsの取り組みが、例え意図的でなかったとしてもSDGsウォッシュだと判断されてしまえば、社会からの信用を落とす結果となってしまいます。

SDGsウォッシュの言葉の元になったグリーンウォッシュとは?

「SDGsウォッシュ」の言葉の元になったのは「グリーンウォッシュ」という言葉といわれています。

この「グリーンウォッシュ」という言葉は、イギリスにあるFuterra社がマーケター向けの資料「SELLING SUSTAINABILITY(サステナビリティを売ること)」で詳しく解説をしています。

グリーンウォッシュには10個のポイントがあります。

グリーンウォッシュのポイント

  1. Fluffy language(ふわふわした言葉)
    明確ではない言葉や表現を用いること。例えば、エコフレンドリー。
  2. Green Products V dirty company(環境に汚染をしているにもかかわらず、グリーン商品を売る企業)
    例えば、河川を汚染する工場で作られた持続性の高い電球。
  3. Suggestive pictures(暗示的な写真や図の使用)
    根拠がないにもかかわらず、環境に良いと思わせるようなイメージ図を用いること。例えば、煙突から煙の代わりに花が出ているイメージ図。
  4. Irrelevant Claims(的外れな主張)
    企業活動のほとんどが反環境保護になっているにもかかわらず、ほんの一部で行っている環境活動を強調すること。
  5. Best in class(相対的に良く見せる)
    他社が環境保護活動をほとんど行っていない場合に自社の活動も少ししかないにもかかわらず、他社よりも環境に配慮していると発表すること
  6. Just not credible(信用できない表現)
    危険な商品をグリーン化しようとしても安全にはならない。例えば、エコフレンドリーなタバコ。
  7. Gobbledygook(意味不明で分かりにくい言葉や表現)
    科学者だけが理解できるような専門用語や情報ばかりを使うこと。
  8. Imaginary friends(空想の友人=捏造)
    自社で作ったラベルであるにもかかわらず、第三者が認めたようにして捏造すること。
  9. No proof(証拠がない)
    正しいかもしれないが証拠が全くないこと。
  10. Out-right lying(まったくの嘘)
    嘘の主張をしたり、捏造したデータを使うこと。

 

このグリーンウォッシュは、環境に配慮していると見せかけている企業を揶揄する時に使われます。

グリーンウォッシュによって、商品に対しての消費者の信頼失墜やパートナーシップを結んでいる企業との取引停止などを引き起こすことになります。
このグリーンウォッシュの言葉が元になり、SDGsウォッシュの言葉ができたといわれているため、
グリーンウォッシュで掲げられている10個のポイントをしないようにすれば、SDGsウォッシュも防げる可能性が高くなります。

中小企業がやりがちなSDGsウォッシュとは?

SDGsビジネスや取り組みを行う際、中小企業がやりがちなSDGsウォッシュがいくつかあります。

  • ホームページで環境保護活動を宣言しているにもかかわらず活動実績がない。
  • 人道支援は最初の1回だけで続いていない。
  • 会社としてグリーン宣言した後も環境汚染が疑われる商品を販売し続けている。
  • 社外に対してはクリーンなイメージを表現していても社内のスタッフには長時間労働を課している。
  • 会社として持続可能な取り組みを行うと言っても消費者に対しての情報発信がない。
  • 今あるサービスを無理矢理SDGsの17の目標に当てはめる。
  • そもそも持続可能な未来の理想の姿を持っていない。
  • 具体的な取り組みアイデアがないのに助成金や補助金を強調する。

 

このように身近でも起こりそうなことばかりです。
もしかしたら、今働いているところがSDGsウォッシュに当てはまっているかもしれません。

もしSDGsウォッシュに当てはまっていると感じたら、すぐにでも対応した方がよいでしょう。
消費者は思った以上にすぐ気付き、今の世の中ではソーシャルメディアなどを使ってマイナス情報を拡散されます。
また、社員の扱いが悪い場合には内部告発という最悪なケースもありえるため、企業の在り方をしっかりと考えなければなりません。

SDGsウォッシュのリスク

SDGsウォッシュをするとどういったリスクが企業にあるのかを考えてみましょう。

  • 消費者からの信頼失墜
  • 消費者の不買運動
  • 売上の大幅低下
  • ソーシャルメディアでネガティブ情報の拡散
  • パートナーシップ企業との契約破棄
  • 社員のモチベーション低下や退職
  • 社員の内部告発
  • 資金調達が困難になる
  • 金融機関からの評価が下がる。
  • 金融機関からの融資ストップ

このように消費者から社員までの意識にまで影響し、さらに資金調達や金融機関までにも影響していきます。
これはSDGsが個人でも行える活動があることやESG投資がSDGsには関係しているからです。

また、今現在20歳以上の人は学校でSDGsを学んでこなかったと思いますが、2020年度からは小学校、2021年度から中学校、2022年度からは高校で「新学習指導要領」が実施され、学校でSDGsを学ぶ機会が持てるようになります。

そのため、この先5年、10年経つと今10代の世代が大人になった時に彼らはSDGsネイティブとして社会に出てくるようになります。

一方で今20代以上の人がSDGsの知識がなく理解が乏しければ大きなギャップが生まれてしまい、時代に取り残され、実態の伴わないSDGsウォッシュをしかねません。
そのため、企業としてはSDGsウォッシュにならないように取り組んでいかなければなりません。

そのためにはまずはSDGsについてしっかりと理解することが大事ですね。

なぜSDGsウォッシュが起こるのか

意図的にSDGsウォッシュを行うのは言語道断ですが、上記で既にお伝えしたとおり、そのつもりがないのに結果としてSDGsウォッシュになってしまう可能性もあります。

 

自社の事業とSDGsを結びつけることができていない

よく見られる失敗が、自社の事業とSDGsを結びつけることができていないケースです。SDGsを企業の経営に統合させる指針として、SDGコンパスというものがありますが、そのSTEP4である「経営への統合」がうまくできていない企業が多いのです。

自然環境や社会に配慮したサステナブルな資源や原材料を使うと、費用が高くなってしまいがちです。そのため目の前のコスト負担を嫌って、事業に深く関係する事柄には手を付けず、直接的には事業と関係のない社会貢献活動などを進めようとしてしまうことがあります。もちろん社会貢献活動にも意味はありますが、SDGsを経営に統合させて事業の一環として推進していることにはなりません。

SDGsの理念を組み入れた事業を進めることができていたら、短期的な収支がマイナスになる可能性はあったとしても、長期的にはメリットの方が大きいはずです。「サステナブル」や「エコ」を強みとして売り出すことで、固定客が増えたり企業の評判が高まったりするからです。また、同じ価値観で経営しているほかの企業との協働なども進めやすくなるでしょう。

重要なのは、事業の特性を活かしてどのようなSDGs戦略を立てるか、ということです。自社独自のSDGsの目標を設定するようにしましょう。

 

サプライチェーンを管理しきれていない

サプライチェーンの管理ができていない場合も、SDGsウォッシュの批判を受ける可能性が高くなります。自社内では環境配慮や労働条件の改善などといったSDGsの理念に合う取り組みを進めていても、サプライチェーンが長く複雑になればなるほど、その上流から下流までをすべて正確に把握するのは難しいからです。

たとえば、委託先が環境配慮に無頓着だったり劣悪な労働条件を放置していたりすることがあるかもしれません。すると、その委託先だけが批判されるのではなく、委託元の企業も批判を受けるリスクがあります。取引先が海外にある場合などは、物理的な距離に阻まれて状況を把握できないこともあるでしょう。また、国や地域が違うと法制度が異なり、労働条件や文化的な背景も変わってくるため、適切な管理が難しくなるという事情もあります。

SDGsは自社の中だけでコミットすればいいというものではありません。委託先なども含めて、事業にかかわるすべての部分でSDGsの理念に合うように企業活動を行う必要があります。サプライチェーンの全体を適切に管理する手腕が問われているのです。

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社内のSDGsへの取り組みへの理解が足りていない

社内におけるSDGsの理解が追い付いていないために取り組みが計画通りに進まず、SDGsウォッシュとなってしまうこともあります。

社内でのコミュニケーションが足りていなければ、全社的な取り組みにはなりません。経営層やSDGs戦略を取り扱う部署ではSDGsの価値観が浸透していたとしても、その他大勢の従業員には「本部がまた面倒ごとを押し付けてきた」と捉えられてしまう可能性もあるでしょう。面従腹背のような状況となり、上辺では納得しているように見せかけつつも日々の業務の中では取り組まないといった状況も起こりえます。

また、理想を語るのは大切なことですが、語られるのが綺麗事ばかりで会社や社員にとってのメリットが伝わらなければ、実際に現場で働く従業員のエンゲージメントがむしろ低くなってしまうこともあります。SDGsは新たなビジネスを開拓するチャンスなのだ、ということを社内で適切にコミュニケーションしなければいけません。どのようなストーリーを用意して社内の共感を得るのか、というのが重要なポイントとなるのです。

そもそもSDGsの推進に関わるような大がかりで長期的な目標というのは、現場レベルにまで落とし込むのは難しいものです。全員が理解し共感できるようなコミュニケーションを行わなければいけません。情報発信と言うと社外に目を向けてしまいがちですが、自社がSDGsという現代の価値観にどう対応していくのか、まずは社内での理解形成を進めてみましょう。

SDGsウォッシュを回避するために

SDGsウォッシュが生じてしまう理由がわかったところで、SDGsウォッシュを回避するためのポイントを再度確認してみましょう。

 

自社としての解釈を持ち、理念やビジョンにあった取り組みを行う

自社の価値観と親和性の高いSDGsの目標を選択するのが、SDGsウォッシュを回避するためのもっとも大切なポイントです。SDGsが目指す未来を、まずは自社としての解釈に落とし込んでみましょう。経営方針や事業内容と照らし合わせ、自社に合う形で取り組みを進めることで、企業活動に余計な負荷をかけることなくSDGsの推進ができるのです。

SDGsの19の目標すべてにコミットしなければいけないわけではありません。むしろ、SDGsを盲信して何の戦略もないままに促進しようとする方が危険です。SDGsのために、今までとはまったく異なる新しいことを始める必要はないのです。企業理念や経営ビジョンに沿った取り組みを選択し、SDGsウォッシュの回避に努めましょう。

 

サプライチェーンを適切に管理する

SDGsウォッシュを回避するための次のポイントは、サプライチェーンの適切な管理です。先述の通り、サプライチェーンが管理できていなければSDGsウォッシュの批判リスクも高まります。それを避けるためには、サプライチェーン上でSDGsに反した活動が行われないような仕組みづくりが必要なのです。

コミットするSDGsの目標に合わせて達成すべき項目を書き出し、取引先とも共有しましょう。定期的に監査を行い、サプライチェーン上で各項目が守られているかを確認する体制を構築しなければいけません。また、取引先が自社の価値観と共鳴するかを見極めるためにも、コミュニケーションを継続しましょう。
SDGsウォッシュの批判を避けるためには、SDGsに反した活動は自社内だけでなくサプライチェーンのどの部分においても許容しない、というコミットメントを示すことが求められています。

 

社員の理解を得るための社内コミュニケーションを行う

すでに述べた通り、経営方針を社内全体に浸透させるためには社内コミュニケーションが重要です。経営層だけでなく、現場レベルで働く社員まで含めた全員がSDGsを推進する必要性を理解していなければいけません。組織の内部で共感を生み出せていない価値観が外部に正しく伝わるはずがないからです。

経営方針を明確に定めて具体的な目標に落とし込み、社内に対して情報を発信しましょう。社内コミュニケーションが適切に行われている企業ほど、社内でのSDGsへのコミットメントも高くなるものです。反対に、理念が社員に正しく伝わっていなければ、現場の社員に反発心が生まれて面従腹背の状態となり、SDGsウォッシュにつながるリスクもあります。
社内における共通目標が明確で、社内全体としてのコミットメントが高いほど、SDGsウォッシュは発生しにくくなります。社員の理解と共感を得られるようなコミュニケーションを心がけましょう。

まとめ

SDGsウォッシュは、企業などが評価を過剰に上げようとするものであったり、国や地域によって意図せずSDGsウォッシュになってしまうケースがあります。

不本意もSDGsウォッシュに取り込まれてしまうと、大きな損失を被るだけでなく、自社の社会的信用も失いかねません。

SDGsに取り組む場合も、SDGsウォッシュを回避するためにも、SDGsの仕組みをしっかりと理解しておくことが求められています。